2020年に始まる小学校のプログラミング教育の必修化

近い将来、小学校で「プログラミング」の授業が必修化するという話があることをご存知でしょうか?生活の中にコンピューターが浸透している現代。子どものうちからIT技術を学ぶ必要性や背景について、しっかり確認しておきましょう。

なぜ小学校のプログラミング教育が必修化するのか?

2016年4月、文部科学省は「2020年度からを目標に小学校におけるプログラミング教育を必修化する」と発表しました。同年6月には有識者会議を行い、その目的を「将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』を育むこと」と定義しています。つまり「プログラムを組むこと」ではなく、「考え方を学ぶこと」がその目的となります。現段階では新たに教科を作らず、学活や算数、理科などの中に盛り込み、体験を通して「プログラミング」が身近にあるものであることを学んでいくとしています。

では、なぜプログラミング教育が必修化となったのでしょうか。

現在、パソコンやスマートフォンなど、私たちにとってコンピューターはとても身近なものになりました。今後はますます生活に欠かせなくなり、技術も進化していくでしょう。しかし一方で、そのシステムの開発・運用・保守を行うWEBエンジニアなど、IT関連の人材が不足しているのが実情です。

経済産業省が2016年6月10日に発表した「「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2015年に約17万人、2030年には約79万人のIT人材が不足するという予測を発表しました。つまり子どもの頃からコンピューターの原理や思考を学ぶことで、IT関連事業者の育成を促進するという狙いがあります。

海外のプログラミング教育事情

海外では、既に小学校からプログラミングを含む情報教育に力を入れている国が多々あります。たとえばアメリカでは、オバマ大統領が自らプログラミング教育を充実させる重要性を説きました。幼稚園児から高校生まで全員がコンピューター関連の授業を確実に受けられるようにするため、3年間でなんと40億ドル以上を各州に投入するよう、要請したそうです。その他、プログラミング教育を推進するNPO法人やプログラミングスクールなど、各団体の活動も活発なようです。

その他、フィンランドでは2016年から小学校においてプログラミングが必修化され、シンガポールやエストニアでは公立学校におけるプログラミング授業の導入が検討されています。イギリスでは、まず先生がプログラミングのカリキュラムを修了してから子どもたちに教えるという動きがあるようです。

各国で推進されている情報教育に追いつくためにも、日本でもプログラミングの必修化は避けられないと言えるでしょう。

実際のプログラミング授業の事例

では、実際に子どもたちがどのような授業を行ったのか、一例をご紹介しましょう。

「絵を動かしてみよう」

対象:小学3年生

課題:
モニタ上で絵を上下左右に動かす。

概要:
1人1台iPadを配布。児童は「Puffin WEB Browser Free」、指導者は「Puffin」を使用し、WEB上の「VISCUIT」で「しゃくとり虫の練習」を操作・体験する。

内容:

  1. しゃくとりむしを動かそう①(基本的な操作説明と実際に動かしてみる)…1時間
  2. しゃくとりむしを動かそう②(様々な動きを入れて動かす)…1時間
  3. 描いた絵を動かそう(虫以外に絵を描いて動かす)…1時間

「プログラムロボットを動かそう」

対象:小学4~6年生

課題:
災害現場を想定。ロボットのセンサやアームを使って対象を救助し、病院まで運ぶというプログラムを組む。

概要:
3人で1台のノートパソコンを使用。言語はレゴマインドストームのEV3ソフトウェアプログラミングのLabView。話し合いながらロボット(ブロックで作成)に必要なプログラムを入れていく。

内容:

  1. 「超音波センサ」を使って災害現場と病院で止まるプログラムを考えよう…2時間
  2. ブロックを組み立ててタイヤを使わずに動かす構造を考え、プログラムを作ろう…1時間
  3. 「カラーセンサ」を使って災害現場と病院で止まるプログラムを考えよう…2時間
  4. 「カラーセンサ」と「超音波センサ」を使って災害現場と病院で止まり、スタート地点まで戻ってくるプログラムを考えよう…1時間
  5. センサやアームを使って災害現場から人命を救助して病院に運ぶプログラムを考えよう…3時間
  6. 音楽に合わせてアームや車体を動かせるプログラムを考えよう…3時間

プログラミング必修化に向けて親が子どもに対してできること

プログラミングの授業がなかった親世代が、プログラミングについて子どもに直接教えてあげることは難しいでしょう。ただ、子どもが学ぶ環境を提供することはできるはずです。以下の方法で子どものサポートを行っていきましょう。

PC、スマホなどに触れる機会を作る

小さい頃からコンピューターに触れることで、苦手意識をなくします。一緒にパソコンでインターネットをしたり、スマートフォンでゲームをしたりしてコンピューターを身近なものにしていきましょう。

プログラミング言語を学ばせる

感覚的に行えるビジュアルプログラミング言語「Scratch」や、文部科学省が開発した子ども向けのプログラミングサービス「プログラミン」を使って、実際にプログラミングをやってみましょう。ゲームのような感覚で気軽に楽しむことができます。

パソコン教室に通わせる

小学生向けのパソコン教室では、プロの指導によって楽しく確実にプログラミングを学ぶことができます。実際にゲームやアプリなどのプログラミングを行ううちに、自分のアイデアを表現する手法が身に付いていきます。