子どもが小学校高学年に上がると悩み始めるのが中学受験。特に習い事をしている場合、習い事をやめて受験に専念させた方がいいのか迷う親御さんも多いのではないでしょうか。今回は、受験と習い事の両立は可能かどうか詳しく見ていきましょう。
中学受験の現状
私立や国立など入学者選抜のある中学校に入学するための試験である「中学受験」は、もちろん絶対にしなくてはならないというものではありません。多くの公立中学校では学区に基づいて入学者が決定するため、試験を受けずに入学することができます。では、実際にはどれくらい子どもたちが中学受験に臨んでいるのでしょうか?
2割が中学受験を経験
学研教育総合研究所の調査によると、2014年に小学校から中学校に進学する子どもたちのうち、中学受験の経験者は約20%にものぼりました。(合否やその他の理由で実際には試験の不要な公立中学校へ進学した子どもも含まれます。)特に東京都など、大都市で中学受験を経験する子どもが多い傾向にあります。5人中1人となると、かなり高い率であると言えるでしょう。
私立に加え公立中高一貫校が増えた
中学受験を希望する子どもは、1990年には15.7%であったことに対し2015年には25.2%と約1割も増加しています。その背景には、私立に加えて2000年代前半に公立の中高一貫校が増えたことが挙げられるでしょう。中高一貫校は入学の際に試験に合格する必要がありますが、中学校から高校への進学はエスカレーター式となっている点が大きな魅力となっているようです。
中学受験のメリット
では、わざわざ試験を受けてまで私立中学や国立中学、公立の中高一貫校に入学するメリットとは何でしょうか?
独自の先取りカリキュラム
中学受験を導入している多くの中学校は、高校受験がないため独自のカリキュラムを組んでいます。東京大学や慶応大学、早稲田大学など難関大学の合格を最終目標にしている学校が多く、高校の授業を先取りしたり大学入試の演習を行ったりと、徹底的にサポートしてくれる点が大きな魅力。公立中学の3年生が高校受験の準備をしている頃には既に大学受験を視野に入れた勉強をしているわけですから、合格率アップは間違いありません。長期休暇でも補講を行うなど、大幅な学力アップに期待ができます。
設備や友達を含めた環境
公立中学校と比べて、学習環境や設備が整っている点も大きな魅力です。大きな図書館や最新型のパソコンが揃った自習室などで真剣に勉学に取り組むことができるでしょう。英語のヒアリングに使用するIT機器や体育館の運動器具も最新のものが多いはず。また周りの友人は中学受験をくぐり抜けてきたわけですから、学力レベルが近く、話が合うでしょう。
習い事と受験対策との両立
では、中学受験の勉強と習い事は両立させることができるのでしょうか?受験のために小さい頃から続けてきた習い事を、4~5年生で辞めてしまう子どもも少なくありません。実際、学習塾などから「お稽古は早めに辞めて勉強に集中してください」と言われることもあります。しかし、それで本当に良いのでしょうか。
「好きなこと」を無理矢理取り上げたところで、子どもの集中力がアップするわけではありません。むしろ好きなことがやれなくなったストレスで勉強が嫌いになり、成績が落ちてしまうこともあります。試験に合格してからまた再開すれば良いと思っても、その頃には技術も情熱もなくなってしまっていることも。万が一習い事を全部辞めて受験にも失敗したとなれば、子どもは大きく傷ついてしまうでしょう。
そのため、もし子どもが習い事に熱中しているようであれば、ぜひ続けさせてあげてください。習い事がうまく受験のストレス解消となるケースもありますし、事実として習い事と受験を両立させた子どももたくさんいます。その習い事が一生の趣味になったり、将来の職業になったりするかもしれません。
親の一存で決めるのではなく、必ずお子さんと話し合ってください。子どもが「続けたい」と言うのであれば、その意見を尊重してあげましょう。受験の負担にならないよう、週一の習い事を隔週にする、時間をずらすなどの方法でうまく調整してあげると良いでしょう。
習い事が役に立つ次世代の入試方法
学校によっては、習い事がプラスになる入試方法を取っているケースもあります。たとえば東京立正中学校では、習い事で何を得たかという自己PR面接が試験内容となるAO(スポーツ・芸術・習い事)入試を導入しています。対象は「スポーツや芸術などを小学校時代から習い事の一環として学んできた児童」。勉強以外に一生懸命習い事を続けてきた子どもこそ有利になる次世代の入試方法と言えるでしょう。打ち込んでいる習い事がある場合は、こういった採用枠がある学校を選ぶのもひとつの手です。
中学受験は、場合によってはお子さんの将来を左右するかもしれない重要なイベント。そのため受験を重視するメリットは大きいですが、もしお子さんが習い事に熱中しているようであれば、ぜひそのまま続けさせてあげてください。上記のように習い事にも、受験や人生においてたくさんのメリットがあると言えるでしょう。