小学校で学ぶプログラミングの授業とは?内容や特徴を解説!

「プログラミングは難しそう」・「小学生には早すぎるのでは」といった不安を抱える保護者も多いのではないでしょうか。しかし、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化され、子どもたちは楽しみながら論理的思考力を育んでいます。そこで今回は、小学校で実施されているプログラミング授業の実態と、教育効果について詳しく解説します。

目次

小学校で学ぶプログラミングの授業内容は?

小学校で学ぶプログラミング学習の特徴

プログラミング的思考を身につける

プログラミングという教科は存在しない

パソコンを使用しない場合もある

小学生がプログラミングを学習するメリット

創造力の促進ができる

論理的思考の向上に繋がる

集中力が育まれる

問題解決能力の向上に繋がる

数学への理解が得やすい

将来の仕事の選択肢が広がる

自己肯定感の向上に繋がる

小学生にはビジュアルプログラミングがおすすめ

小学生におすすめのプログラミング教材2選

まとめ

小学校で学ぶプログラミングの授業内容は?

小学校のプログラミング授業では、学年に応じて段階的に学習内容を深めていきます。低学年から高学年まで、子どもの発達段階に合わせた適切な教材や題材を用いて、楽しみながら学べる環境を整えています。低学年(3年生)では、ゲームやアニメーション作成をとおして、プログラミングの基礎を学ぶのが一般的です。
たとえば、キャラクターを動かすための命令を組み合わせて、簡単なストーリーのあるアニメーション作成をおこないます。そして、中学年(4年生)に進むと、より実践的な内容としてプログラミングで操作できるロボットの作成に取り組みます。
センサーを使って動きを制御したり、特定の条件下で動作を変えたりするなど、より複雑な命令を組み合わせた学習が可能です。そして、高学年(5〜6年生)では、教科の学習と連携したプログラミング活動を展開します。算数科では正多角形をプログラミングで描く学習を介して、図形の性質について理解を深めます。
このような段階的な学習により、子どもたちはプログラミングの基礎から応用まで、体系的な理解を深めていくのが基本的な流れです。各学年で得た知識や経験は、次の学年での学習にも活かされ、プログラミング的思考力が着実に育成されます。

小学校で学ぶプログラミング学習の特徴

小学校のプログラミング教育は、プログラミング言語の習得を目指すのではなく、子どもたちの論理的思考力を育むことに重点を置いています。以下では、小学校プログラミング教育の3つの重要な特徴について紹介します。

プログラミング的思考を身につける

小学校のプログラミング教育では、プログラミング的思考力の育成を最重要課題としています。プログラミング的思考とは、物事の動作や順序を理解し、問題を効率的に解決するために論理的に考える思考方法を指します。この思考法が重視される理由は、現代社会において論理的な思考力が不可欠だからです。
具体例として、算数の授業では正多角形を描く手順をプログラミング的に考えることで、図形の性質への理解を深めます。「前に進む」や「右に〇度回る」など、基本的な動作を組み合わせて正多角形を描く過程で、子どもたちは図形の内角や外角について理解を深められるのです。そして、プログラミング的思考力は、日常生活における問題解決にも応用されます。

プログラミングという教科は存在しない

小学校のプログラミング教育は、独立した教科としては実施されていません。プログラミング教育の本質が、特定の技術習得ではなく、各教科で培う資質・能力と結びついた論理的思考力の育成にあるからです。
例として、国語では物語に登場する人物の名前(漢字)を分解し、どのような組み合わせでできているかを理解したり、音楽では音の組み合わせをプログラミング的な視点で捉えたりします。
このように、各教科に応じてプログラミング的思考を活用することで、子どもたちは教科の本質的な理解を深めながら、同時にプログラミング的思考力も自然に身につけられます。

パソコンを使用しない場合もある

小学校のプログラミング教育では、パソコンを使用せずにプログラミング的思考を学ぶ「アンプラグドプログラミング」を取り入れています。パソコン操作に不慣れな低学年の子どもたちでも、プログラミングの本質を理解しやすくするためです。
アンプラグドプログラミングでは、身体を動かしたり、カードを使ったりしながら、論理的な思考プロセスを体験的に学ぶところからスタートします。具体的には、教室内で子どもたちが「ロボット役」と「命令役」に分かれ、ロボット役が命令役の指示どおりに動くゲームです。
「3歩前に進む」や「右に90度回る」といった基本的な命令を組み合わせて目的地に到達する活動をとおして、プログラミングの基本概念を学んでいきます。また、カードを使った活動では、日常生活を細かい手順に分解し、それらを正しい順序で並べ替える学習もおこなわれます。
朝の準備や給食の配膳手順など、身近な活動をプログラミング的に考えることで、順序立てて物事を考える力が自然と習得できるでしょう。以上の点から、パソコンを使用しないプログラミング学習は、児童の発達段階に応じた無理のない学びを提供し、プログラミング的思考の基礎を着実に育んでいます。

小学生がプログラミングを学習するメリット

プログラミング学習は、子どもたちの将来に大きな可能性をもたらします。ここからは、小学生がプログラミングを学ぶことで得られる7つの重要なメリットについて解説します。

創造力の促進ができる

プログラミング学習は、子どもたちの創造力を大きく伸ばす効果があります。自分のアイデアをプログラムとして形にする過程で、想像力が豊かに育まれるからです。プログラミングでは、作りたいものを実現するために必要な要素を考え、組み合わせながら新しいものを生み出します。オリジナルのゲームを作る場合、キャラクターのデザインから、動きのパターン、ゲームのルールまで、すべてを自分で考えて創りあげなければなりません。また、実際にプログラミングを学ぶ子どもたちは、単なるプログラムの作成にとどまらず、物語を作ったり、音楽を奏でたり、アニメーションを制作したりと、さまざまな形で創造性を発揮しています。
自分の想像したものが画面上で動き出す体験は、さらなる創作意欲を刺激し、創造力の発展につながっていきます。そして、プログラミングには「正解」がひとつとは限らないといった特徴があり、同じ目的を達成するためにも多様なアプローチが可能です。この特徴により、子どもたちは自由な発想で問題解決に取り組み、独創的なアイデアを生み出す力を養えます。

論理的思考の向上に繋がる

プログラミング学習は、子どもたちの論理的思考力アップが期待できます。プログラミングでは、目的を達成するために必要な手順を順序立てて考え、実行していく過程が不可欠だからです。プログラミングの学習過程では、複雑な課題を小さな要素に分解し、それぞれの要素を適切な順序で組み立てなければなりません。
キャラクターを画面上で動かす場合「前進」・「右折」・「左折」といった基本動作を組み合わせ、目的地までの最適な経路を設計するのが基本です。また、プログラミングでは「もし〜ならば」などの条件分岐や「〜まで繰り返す」というループ処理など、さまざまな制御構造を学びます。
これらの概念を理解し活用する過程で、子どもたちは物事の因果関係や条件関係を正確に把握し、効率的な解決策を見出す力が育まれます。そして、プログラムにバグが発生した際には、どの部分に問題があるのかを論理的に追究し、修正する経験も重要な学びとなるでしょう。
プログラミング学習を介して培われた論理的思考力は、子どもたちの学習全般の基礎となり、将来的な問題解決能力の土台を形成します。

集中力が育まれる

プログラミング学習は、子どもたちの集中力を大きく向上させます。プログラムの作成には、細かな命令を正確に入力し、一連の処理を丁寧に組み立てる必要があるためです。たとえば、ゲームのキャラクターを自由自在に動かすには、移動距離やタイミング、動作の順序など、多くの要素に気を配らなければなりません。
そのため、子どもたちは長時間にわたって多くの課題に没頭し、粘り強く取り組む姿勢が身につきます。また、プログラミングでは自分の作品が完成するまでの過程で、何度も試行錯誤を重ねます。予測どおりの動きにならない場合、どこに問題があるのかを慎重に確認し、修正を加えていく作業が求められます。
この集中力は、ほかの学習活動や日常生活における課題解決にも活かされ、子どもたちの成長を支える重要な力となり得ます。

問題解決能力の向上に繋がる

プログラミング学習は、子どもたちの問題解決能力を飛躍的に高めます。プログラムの作成過程では、目標達成のため、幾多の課題に直面し、それらを克服していく経験を重ねるからです。一例として、ゲームを作る際には、キャラクターの動きがおかしい、または画面表示が意図したとおりにならないなど、さまざまな問題が発生するものです。
子どもたちはこれらの問題に対して、原因を特定し、解決策を考え、実行して効果を確認するといった一連のプロセスを繰り返し体験します。あるプログラムの不具合に対して、「ここをこう変えてみたら」・「別の方法を試してみよう」といった建設的な意見を出し合いながら、解決策を模索します。
この過程で、問題を多角的に捉える視点や、創造的な解決方法を生み出す力が育まれるのです。

数学への理解が得やすい

プログラミング学習は、数学的な概念の理解を深める効果的な手段です。抽象的な数学の概念を、視覚的かつ実践的に体験しながら学べる環境を提供するためです。プログラミングでは、座標や角度、図形の性質など、多くの数学的要素を実際に活用します。
キャラクターを画面上で動かす際には座標系の理解が必要であり、多角形を描く際には角度や辺の長さについての正確な知識が欠かせません。これらの要素を実際のプログラミングで使用することで、数学の概念がより身近なものとして理解されるでしょう。
実践的な例として、正多角形を描くプログラムの作成があります。子どもたちは、正多角形の内角の和や外角の性質を理解しながら、プログラムを組み立てていきます。また、変数の概念も自然と身につき、数値を変化させることで図形がどのように変化するかを視覚的に学べる点は、プログラミング学習の大きなメリットです。
プログラミングと数学の融合は、単なる計算や公式の暗記を超えた、実践的な数学理解を促進します。

将来の仕事の選択肢が広がる

プログラミング学習は、子どもたちの職業選択の幅を大きく広げます。デジタル技術が急速に発展する現代社会では、プログラミングの基礎知識や論理的思考力が、多くの職種で重要視されているからです。自動車業界ではAI技術を活用した自動運転システムの開発が進み、医療現場では電子カルテやオンライン診療システムの導入が一般化しました。
建築業界でも、3Dモデリングソフトを使用した設計が標準となり、小売業ではデジタルマーケティングが必須のスキルです。このように、幼少期からプログラミングに親しむ経験は、将来のキャリア選択に大きな価値をもたらします。プログラミングを学ぶ過程で身につけられる論理的思考力や問題解決能力は、どのような職業においても活用される普遍的なスキルに発展します。

自己肯定感の向上に繋がる

プログラミング学習は、子どもたちの自己肯定感を着実に高めていきます。自分で考えたプログラムが実際に動作する瞬間、子どもたちは大きな達成感を味わい、自信を深めていくためです。
たとえば、画面上のキャラクターが忠実に動いたときや、自分で作ったゲームで友達が楽しそうに遊んでくれたときなど、子どもたちは自分の力で何かを創り出す喜びを実感するでしょう。また、プログラミングの学習過程では、試行錯誤を繰り返しながら問題を解決する経験を重ねます。最初は難しく感じた課題も、粘り強く取り組むことで解決策が見つかります。こうした経験を経て「やればできる」という自信が芽生え、新しい挑戦への意欲が高まるのもプログラミング学習の大きな利点です。

小学生にはビジュアルプログラミングがおすすめ

小学生のプログラミング学習には、ビジュアルプログラミングが最適です。ブロックを組み合わせるだけで直感的にプログラムを作成できるためです。ビジュアルプログラミングの最大の利点は、文法エラーの心配なく、プログラミングの本質的な考え方に集中できる点にあります。
従来のプログラミング言語では、セミコロンの付け忘れや括弧の対応ミスなど、初学者に起きやすい文法的な問題が多く存在しました。一方、ビジュアルプログラミングではブロックが正しく組み合わさらない場合、それ自体が視覚的なフィードバックとなり、子どもたちは自然と正しい組み合わせを学んでいきます。
そして、ビジュアルプログラミングを介して基礎を固めた後は、より高度なプログラミング言語への移行も円滑に進みます。

小学生におすすめのプログラミング教材2選

小学生のプログラミング学習に最適な教材は「Scratch(スクラッチ)」と「Minecraft: Education Edition(マインクラフト:エデュケーション・エディション)」です。以下では、2つの教材の特徴を詳しく解説します。

・Scratch(スクラッチ)

マサチューセッツ工科大学(MITメディアラボ)が開発した無料のプログラミング環境で、世界中の教育現場で活用されています。Scratchの特徴は、アニメーションやゲームを作りながら、プログラミングの基本概念を学べる点です。
画面上のキャラクターの動作だけでなく、音楽を鳴らしたり、物語を作ったりと、子どもたちの創造性を存分に発揮させる機会を提供します。また、作品をほかのユーザーと共有する機能も備わり、相互に学び合う環境も整っています。

・Minecraft: Education Edition

人気ゲーム「マイクラ」の教育版は、ゲーム性を活かしながらプログラミングを学べる教材です。マイクラの魅力は、3D空間での直感的な操作と、自由度の高い創造性にあります。自動で建物を建設するプログラムを作成したり、ゲーム内のキャラクターの行動をプログラミングで制御したりと、実践的な課題に取り組みながら学習を深められます。
多くの子どもたちが既にマイクラに親しんでいるため、プログラミング学習への抵抗も少なく、高い学習効果が期待できるのも大きなメリットです。
今回紹介した2つの教材は、それぞれの特徴を活かしながら、子どもたちのプログラミング的思考を育むすぐれた学習環境を実現します。視覚的でわかりやすいインターフェースと、創造性を刺激する要素により、楽しみながらプログラミングの基礎を身につけられるでしょう。

まとめ

本記事では、小学校で実施されているプログラミング教育の内容と特徴について解説しました。2020年度から必修化された小学校のプログラミング教育は、ビジュアルプログラミングを中心に展開され、論理的思考力や創造力、問題解決能力を育みます。また、Scratchやマイクラといった教材を活用し、子どもたちは楽しみながらプログラミングの基礎を身につけています。